今年2024年に大流行しているのがマイコプラズマ感染症です。肺炎マイコプラズマという微生物(細菌の仲間)による感染症で、急性咽頭炎(ただの風邪)から気管支炎や肺炎までさまざまな病態があります。感染から2〜3週間で発症し、初発症状は咽頭痛や発熱です。数日後から乾いた激しい咳が始まり、咳のために眠れない、胸が痛いなどの症状を認めることもあります。咳は次第に痰の絡む咳になって、解熱後も3〜4週間続くことがあります。
病初期の診断には咽頭ぬぐい液の迅速検査(抗原検査・遺伝子検査)を行いますが、検出率はあまり高くありません。血液検査で肺炎マイコプラズマの抗体価を調べ、病初期より回復期の方が上昇していれば診断を確定できます。
従って、症状の経過や胸部レントゲン所見などからマイコプラズマ肺炎を疑って治療を開始します。治療にはマクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシンなど)が有効です。テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン塩酸塩)も有効ですが、歯牙黄染の副作用のため永久歯が生え揃っていない小児には使用できません。抗菌薬の内服後2〜3日で解熱しますが、過剰な免疫応答によって高熱が続いたり、肺炎が重症化したりする場合はステロイドを併用します。
肺炎が治った後も、気管支の線毛上皮のダメージが回復するのに1〜3か月かかると言われています。その間、気管支に痰が溜まりやすく、痰の絡んだ咳が続いたり、気道過敏性が高まって喘息のような症状を認めたりします。長引く咳でお困りの場合には、小児呼吸器外来にご相談ください。
肺炎マイコプラズマは飛沫・接触感染で伝播します。家庭内での感染を防ぐために、家族が発熱したら家庭内でもマスクをして手洗いを励行してください。また、抗菌薬を最後まで飲み切ることも大切です。