
夜尿症(おねしょ)の対策に「起こさない」、「怒らない」、「焦らない」という3原則があります。今回は「起こさない」ことについてお話しします。
夜尿症の子がいる親御さんの中に、「夜中に起こしてトイレに行かせた方が夜尿を減らせるのではないか」と考えている人が何人かいます。確かにそうすることで夜中に漏れることは減るでしょうが、これには大きな問題があります。なぜなら夜間の睡眠を妨げるといくつかの利尿促進物質が増えて夜間多尿になると考えられているからです。寝ている子を起こしてトイレに行かせることは逆効果なのです。
一方、効果の高い夜尿症の治療法の一つにアラーム療法があります。アラーム療法とは、行動療法(条件づけ療法)です。下着の中にアラームセンサーを取り付け、受信機をパジャマなどに取り付けます。アラームセンサーは尿の水分を感知すると受信機が音を鳴らしたり振動したりします。この刺激によって夜尿症の患者を「起こす」治療法です。治癒する割合は約70%と言われています。夜尿のない子は夜間睡眠中に膀胱が尿で満たされると、その刺激が脳に伝えられ、脳は排尿を抑える信号を発して膀胱が収縮しないようにしています。夜尿がある子はこの排尿抑制の神経が未熟である場合が多いのです。アラーム療法で夜尿症が改善する理由はまだ明らかにされていませんが、このような排尿抑制の神経を強化する治療法と考えられています。
夜尿をしてしまう前に起こすことは勧められないのに、アラーム療法で起こすのは勧められる、矛盾しているようですが、両者の違いは起こすタイミングにあります。膀胱が尿で満たされたことを脳に伝えることが大切なのです。したがって、膀胱に尿が満たされる前に起きて排尿してしまうと、尿で満たされたという刺激が脳に伝えられないため、排尿を抑制する神経の成長が遅くなる可能性があるのです。尿が漏れる前に起こしてはいけないのです。