この度平成30年10月より当院において新たに肝臓内科を標榜することになりました。
肝臓は人体で最大の臓器であり生体の「化学工場」ともよばれ、生体に必要な様々な物質を合成・分解する働きを担っています。例をあげるなら普段我々が口にする食事もそのままでは自分の栄養にはできず、消化管で分解した後必ず肝臓を通って自らの蛋白質や糖、脂肪に合成されます。その他にも凝固因子の合成、胆汁酸の合成、ビリルビンの代謝、薬物の代謝、生体に不要な物質の解毒など極めて多くの処理が肝臓でなされ、その機能は生命維持には必須のものです。
慢性の肝疾患としてこの30年間はウイルス性肝炎、特にC型肝炎が話題の中心でした。しかし最近になりC型肝炎は飲み薬でほぼ完治が得られるようになりました。当院でもすでに数多くの治癒例を経験しております。C型肝炎あるいはC型肝炎の疑いがあると言われた方はぜひ一度当科を受診してください。また現在も一定の数で存在するB型肝炎に対しても対応しております。C型肝炎が減る一方、新たに問題となっているのがアルコール性肝障害と脂肪肝です。特に脂肪肝は成人の約4割にも達すると言われており、その全てが治療対象になるわけではありませんが一部に肝硬変に進展するものもあります。脂肪肝を指摘された方も一度は専門家受診をお勧めします。その他特殊な肝臓の病気として自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎(以前は原発性胆汁性肝硬変という名称でした)、原発性硬化性胆管炎、薬物性肝障害など様々な慢性の肝疾患がありますが当科ではこれらの疾患に対しても診断や治療を行っております。
急性の肝疾患では急性肝不全(劇症肝炎)があげられます。原因はウイルス性や薬物性など様々ですが、死に至る可能性が高く初期の対応が非常に重要です。当院では腎臓内科とも協力し、重症の急性肝不全に対して行う血液浄化療法も行っています。
肝臓疾患の終末像は肝硬変と肝細胞癌です。ただしこれらも初期、早期の段階ならば十分に対応が可能で、適切な治療を受ければ肝臓の病気のない人と変わらない生命予後が期待できます。肝細胞癌に対しては早期ならば当院での外科手術の他に、当科ではラジオ波焼灼術という体に負担の少ない治療も行っています。またある程度進行した肝細胞癌に対しては西川副院長を中心に肝動脈塞栓術という治療を行っています。さらに進行した肝細胞癌に対しては分子標的薬などの抗癌剤治療がここ数年注目を浴びています。
当院ではこれまで消化器内科の中で肝臓疾患を診て参りました。今回肝臓内科を標榜することになりましたが、実際の診療自体はこれまでとほぼ変わりありません。消化器内科の先生方と一緒に肝臓疾患を診ていきますし、私も肝臓以外の消化器疾患を診ていくつもりです。ただ肝臓学会指導医として私のこれまでの知識と経験が、少しでも患者さんや病院の皆様方のお役にたてればと日々診療にあたらせていただく所存です。
肝臓内科 科長髙森 賴雪