わが国では年間約10,000人の方が食道がんにかかります。特にたばこを吸う方、お酒をたくさん飲まれる方、お酒を飲んだらすぐに顔が真っ赤になる方は食道がんにかかるリスクが高く注意が必要です。
食道とは食事を飲みこむ際に胃にいたる食事の通り道となっている筒のような臓器です。食道は周囲を心臓や大血管、肺に囲まれております。
食道がんは他の消化器癌に比べると悪性度が高いと言われていますが、早期癌で発見されれば上部消化管内視鏡(いわゆる胃カメラ)による治療が可能であり、進行癌で発見されても抗がん剤治療や放射線療法と組み合わせて手術を行うことにより良好な治療成績をあげることができます。
食道の解剖学的特徴
- 食道周囲はリンパ管や血管が発達している →リンパ節移転が早期より生じやすい
- 他の消化管と違い漿膜が存在しない →周囲臓器(気管、大動脈、心嚢)に浸潤しやすい
どんな症状が出るのか?
食道がんになると最初のうちは無症状ですが、食べ物を飲み込む時の違和感に始まり、飲み込む時のつかえ感、むせ込みやすくなる、声がかすれ声になる、などの症状が出てきます。
食道がんの治療方法にはどんなものがあるか?
食道がんの治療では内視鏡治療、手術治療、化学療法、放射線療法と治療のバリエーションは多岐にわたっていますので、食道がんの進行度と患者さんの全身状態を考慮して消化器内科との合同カンファレンスのもと最も的確な治療を行います。
どんな手術をするのか?
食道がんの手術の基本は、くび、胸、おなかのリンパ節とともに食道を切除する術式となります。食道を切除した場所には胃を胃管という細長い形にして残った食道とつなげます。高齢であったり、呼吸機能が悪かったりすることで開胸手術(胸を切る手術)が難しい患者さんに対しても術式を工夫して手術を行っております。
当院消化器外科の特徴
当科の特徴としては、きずの小さな手術(4~5センチ程度の小さな創以外は穴をあけるだけの手術)を行うことで、術後の痛みの軽減をはかり、すぐに歩行を開始するなどリハビリを開始できるようにしております。
特に高齢の方、心臓や肺、肝臓、腎臓に問題を抱えている方に関しましてはリハビリや栄養的な観点での評価を随時行いながら、全身状態に応じて術式を工夫しております。栄養サポートセンターやリハビリテーション技術科には多数のスタッフが在籍していることも当院の強みです。