慢性疼痛とは
薬や手術などの治療をおこなったにもかかわらず、3ヶ月以上にわたって続く痛みは「慢性疼痛 [まんせいとうつう]」と呼ばれます。
疼痛とは「痛み」を指す医学用語です。慢性疼痛は肉体的・精神的にダメージを与え、日常生活やその人らしさを大きく損なう原因となります。
最近の研究により、慢性疼痛の多くに、とても細い新生血管※1が存在することが分かってきました。慢性疼痛に関わる新生血管は非常に微細で、肌の上から見てもわからず、通常のレントゲンにも写りません。新生血管による痛みは、じっとしていても感じる場合が多く、押すと痛みが強まるという特徴があります。
※1 新生血管:ケガが治る過程などで、元からある血管から分岐して新しくできる血管
どのような症状が起こるのか
自覚症状は、病名が示すとおり「痛み」です。
下記のような痛みを訴える患者さんが多くいらっしゃいます。
- 押すと痛い
- 雨が降る前に痛くなる
- 古傷の痛み
- じっとしていても、いつも痛みを感じる
- ズキズキ、ジンジン、チクチク、ズーンとする痛み
慢性疼痛の治療法
痛みの原因が、「新生血管によるもの」か「それ以外のもの」なのかを調べる必要があります。新生血管が原因の痛みの場合、カテーテルから薬を流して詰めてしまうことによって、痛みが劇的に改善することが明らかにされています。これを、運動器※2カテーテル治療と言います。
慢性的な痛みの場所には、異常な細かい新生血管(分かりやすいように「もやもや血管」と呼ぶこともあります)が形成されています。さらに、神経線維がそれらの血管と一緒に成長することによって、治りにくい慢性的な痛みや炎症が生じていると考えられています。
「異常な血管に対して細かな粒子を流し、血液の流れを一時的に止める治療」は、がんや子宮筋腫の治療法として、20年以上前からおこなわれていました。運動器カテーテル治療は、この治療法を慢性疼痛に応用したものです。
日本で初めて実施されたのは2012年。いまでは新たな治療の選択肢として期待されており、少しずつ普及してきています。
※2 運動器:からだの動きに関わる骨、筋肉、関節、神経などの総称
治療法について、もっとくわしく
1.通院回数はおおよそ何回ですか?
通院は3~4回程度です。
(受診→診断→治療→術後の受診、もしくは受診・診断→治療→術後の受診です)
2.カテーテル治療はどのようにおこないますか?
治療する部位に応じて、手首(橈骨動脈:とうこつどうみゃく)、肘(上腕動脈)、 足の付け根(大腿動脈:だいたいどうみゃく)のいずれか、もしくは数か所から、痛みのある部位に向かって、カテーテルと呼ばれる特殊な0.6mm程度のプラスチック製の柔らかく細い管を挿入します。
痛みの原因となっている新生血管までカテーテルを進め、カテーテルから薬液を流して新生血管を詰めてしまいます。
新生血管がきちんと処置できたかを確認してから、カテーテルを抜去します。穿刺部位を手で圧迫したのち、テープで固定して止血を確認すれば治療が終了します。
小さいきずで済みますので、カテーテル治療にかかる時間は1時間ほどで、治療は日帰りで行うことができます。
しかし、「局所麻酔薬を使うこと」「穿刺部※3の再出血リスクもあること」から、当日は車やバイク、自転車等の運転は禁止させていただきます。公共交通機関をご利用になるか、同伴者の運転でご来院ください。また、万が一何らかの合併症が発生した場合や、止血が困難な場合などは同日緊急入院していただくことがあります。
※3 穿刺部:カテーテルをいれた部位
当院での慢性疼痛に対するカテーテル治療
- 希望される方は循環器内科あるいは整形外科の外来でご相談ください。
- 痛みの原因が「新生血管」によるものかどうかの診断も可能です。
- この治療は健康保険の対象外です。あらかじめご了承ください。
- すでに治療を受けている病院がある場合には、受診時に検査結果をお持ちください。
過去の運動器カテーテル治療の研究では、治療をうけた方の9割以上の方に自覚症状の改善が認められています。また、約7割の患者さんが治療6か月後の時点で「非常に大幅に改善した」または「大幅に改善した」と答えています。