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病気ガイド

子宮脱・膀胱瘤:ロボット手術:泌尿器科

ロボット支援下仙骨膣固定術とは?

(RASC:Robot-assisted sacrocolpopexy)

ロボット支援下仙骨腟固定術(ろぼっとしえんか せんこつちつこていじゅつ、Robot-assisted sacrocolpopexy: RASC, RSC)は、骨盤臓器脱に対するロボット手術です。本邦では2020年に保険適応となりました。本手術は、他のロボット手術と同様に腹腔鏡手術の延長として承認されましたが、その適応も腹腔鏡下仙骨腟固定術と同様であり、ほぼ全てのタイプの骨盤臓器脱(子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤、腟断端脱など)に対して施行が可能です。

本手術の特徴、腹腔鏡下仙骨腟固定術との比較

仙骨腟固定術は、骨盤の深部で、ミリ単位以下の精度で縫合操作を多用する手術です。そのため、腹腔鏡手術では、腹腔鏡下での縫合操作に習熟している必要があるため、比較的難易度の高い手術とされています。一方、手術支援ロボットは狭い空間での繊細な作業にその真価を発揮する医療機器です。ロボットによって、手ブレなく、より自然な動きで縫合操作ができることから、仙骨腟固定術の経験の浅い術者であっても、短期間で習熟が可能であるというメリットがあります。また、高解像度の3D画像でかつ画面ブレがないことから、臓器の微細な構造がよく視え、その構造を壊さないような細やかな操作が行えることから、剥離操作の質も上がり、出血のない術野を維持できます。図のように、多数ある細い血管のどれを残しどれを切るのか、フィルムのような膜のどこを切開するのかなど、ミクロレベルの手術が実現可能なのはロボット手術だからこそと考えます。

なお、本術式では腹腔鏡手術とロボット手術の保険点数は同じですので、患者さんの金銭的な面での負担は変わりません。

当科の試み ~何よりも安全な手術を目指して~

当科では、「合併症の可能性を限りなく減らし、より安全に、そして患者さんがより安心して手術をうけられる」ことが最も重要だと考えています。たとえ1%の発生リスクといわれる合併症であっても、その合併症が患者さんへ与える影響が重大であるのなら、それを可能な限り避けるべく手技の改変、術式の改良などの努力が必要であると考えます。また、「腹腔鏡手術に優る、ロボット手術の患者メリットの創出」を目標に掲げ、これまで様々な試みを行ってきました。そして、当院にダビンチSPというより低侵襲性を高めた新たなロボット機種を導入したことで、術式をさらに進化させることができたと考えています。

創が少なく、目立たない

ロボット支援下仙骨腟固定術では、腹部に創が4~5個残るのが一般的です。当科ではダビンチSPを用いることで、創は1-2個に減りますので術後の痛みが少ないことが期待できます。また、創は臍あるいは下着に隠れる位置になるため、整容性にも優れています。当科では現在、ロボット支援下仙骨腟固定術のほとんどの症例をダビンチSPを用いて行っています。

臓器の負担を減らし、術後の癒着を回避する( ⇒ 腹膜外アプローチ)

ロボット手術では、患者さんの頭が20度前後下がった状態(頭低位、トレンデレンブルグ位)で手術を行うのが一般的であり、ロボット支援下仙骨腟固定術においても同様です。ロボット支援下仙骨腟固定術では、腹腔内にある腸管を上腹部へ移動させることで、骨盤内に手術操作に必要なスペースを確保するために頭低位を行います。ただし、この半ば逆立ちしたような状態は生理的とはいえず、血行動態や肺機能の変化、気道浮腫、頭蓋内圧や眼圧の上昇、滑落・ズレによる皮膚・神経障害などのリスクがあるといわれています。さらに、骨盤臓器脱患者さんは高齢であることが多く、これら心臓・肺・脳・眼などの予備能が潜在的にも低下していることが予想されます。そのため、頭低位によるこれら臓器障害を避けるために、手術時間の短縮や頭低位の軽減(15度前後)などの対策が一般的にとられています。

当科では、術後の腸管癒着に伴う腸閉塞を回避することを目的として、「腹膜外アプローチで行うロボット支援下仙骨腟固定術」を開発し、2023年より継続して行っています。これは前立腺全摘術では一般的な腹膜外アプローチを本術式に応用したものですが、腹腔内に入らずに手術を完遂することで、術後の腸管癒着リスクの低減が期待できるばかりか、術野確保のための腸管の移動が不要であるため、頭低位も必要としません。様々な合併症リスクを低減するメリットのある術式だと考えています。なお、腹膜外アプローチはすべての患者さんが適応になるわけではありません。ご自身が対象となるか聞いてみたいという方は、当科外来へご相談ください。

具体的な治療経過

当院では現在、ダビンチXi 2台およびダビンチSP 1台の計3台の手術支援ロボットを用いて、手術までの待機期間が短くなるよう努めています。患者さんの併存疾患や骨盤臓器脱の状態を考慮して術式のご提案をしますが、「子宮を残したい」「卵巣を残したい」「なるべく再発がないようにしたい」「安全を第一に考えたい」など、個々の患者さんの希望に沿ってオーダーメイドで手術内容を計画していきますので、気兼ねなくご相談ください。

手術時間は通常2-4時間で、手術翌日には食事も歩行も可能です。入院期間は約1週間です。

これは当院でロボット支援仙骨腟固定術を施行された患者さんに行った自記式アンケートの結果です(550名が回答)。術後1ヵ月の時点で8割弱の患者さんが術前より具合は「とても良い」「良い」と答えており、時間とともにその具合も改善していることがわかります。また、経過全体として9割の患者さんが「少し良い」以上の回答をされており、本手術で生活の質が改善されていることがうかがえます。一方、具合が悪いと回答された患者さんの大半は術後の腹圧性尿失禁や便秘が原因と推察され、必要に応じて薬物療法や骨盤底筋体操の個別指導、栄養相談などを行っています。

術後の生活で気を付けること

退院直後から日常生活に制限はなく、デスクワークなど体の負担の少ない仕事であればすぐに再開いただいて構いません。ただし、重いものを持つような仕事は1ヵ月間は控えることを勧めています。
術後の生活で、メッシュが入っていることの異物感を感じる方はほとんどいません。また、メッシュそのものは手術で使う糸を編み込んで作られたものですので、MRI検査や大腸カメラなど含めて今後受けられなくなる検査があるわけではありません。

骨盤臓器脱は治すことのできる疾患です。そして、「骨盤臓器脱で悩み我慢している今の生活から解放され、温泉や旅行、やめていた趣味などを再開し、より良い生活を手に入れて明るい人生を過ごしてほしい」というのが、この手術にかける我々の想いです。この手術を受ける方のほとんどが60歳~80歳代であり、高齢だからという理由で手術をあきらめるのはもったいないことです。いきなり手術とまでは勇気が持てないという方も、まずは専門医に話してみることから始めてみませんか?

この記事を書いたのは

森山 真吾のプロフィール画像
森山 真吾(もりやま しんご)副科長
泌尿器科・女性泌尿器
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