虚血性心疾患(きょけつせい しんしっかん)とは、動脈硬化により心臓に栄養を送っている冠動脈という血管が狭くなり、血流が悪くなることで心筋に必要な血液が不足し、胸が痛くなる病気です。狭心症や心筋梗塞が具体的な病気です。
初期症状
典型的な症状は歩行時や力仕事をした時の胸部圧迫感や絞扼感(こうやくかん)*です。
糖尿病、高血圧、喫煙、高コレステロール症の既往がある患者さんはこの病気にかかりやすいことがわかっています。特に高齢者は症状が出にくく、症状が軽度でも心電図異常を指摘されて発見されることもあります。安静時にも症状が出るような方は不安定狭心症という心筋梗塞に移行する可能性が高い状態ですので、一刻も早い診断と治療が必要です。
*胸が締め付けられるような感じ
どのような検査をするのか
虚血性心疾患の診断に向けた基本的な検査として、日本循環器学会は冠動脈のCT検査を推奨しています(1)。
この検査では、血管の形状をわかりやすくする薬(造影剤)と心拍数を調整する薬を注射して心臓のCT画像を撮影します。これにより、血管の中の狭まりや異常を詳しく見ることができます。ただし、冠動脈のCT検査では血管の形状は分かりますが、心筋が十分な酸素を受け取れているかまでは確認ができません。
そのため、CT検査で血管の狭窄が見つかった場合は、心筋への血流をより詳しく調べるために、心筋シンチグラフィ検査(放射性医薬品を注射したのち特別なカメラで心臓を撮影する検査)や心臓カテーテル検査(手首や足の付け根の血管から細い管をからだに入れ、心臓の血管を調べる検査)といった、追加の検査が行われます。
傷がつかない心臓精密検査・FFR-CT
FFR-CTは、CT撮影だけで血管の状態と虚血の程度を同時に評価できる新しい検査法です。
特別な解析を加えることにより、冠動脈虚血の指標となる冠血流予備量比(FFR)をからだを傷つけずに測定できます。
痛みや合併症のリスクがなく、入院もせずに、血管が狭くなっている部分に対してどのような治療を行うか(カテーテル治療やバイパス手術、あるいは薬物治療)を決定するのに役立ちます。
CT検査の画像を米国のHeart Flow社に画像を送って解析し、通常2~3日で結果が出ます。そのため、比較的迅速に患者さんに結果を提供することが可能です。
当院の強み
この検査は近年日本へ導入された比較的新しい検査であり、保険診療の範囲内で受けていただくことが可能です。一定の施設基準を満たした病院でしか導入されておらず、埼玉県内では2024年3月の時点でわずか5施設しか導入されておりません。
当院では2023年4月より運用を開始しており、今までに多くの患者さんが受けられており、今後も本検査を虚血性心疾患の早期診断・治療へ積極的に活用していければと考えております。
- JCS 2022 Guideline Focused Update on Diagnosis and Treatment in Patients With Stable Coronary Artery Disease. Circ J. 2022;86:882-915.