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病気ガイド

中咽頭がん:ロボット手術・TORS:耳鼻いんこう科・頭頸部外科

中咽頭がんは、扁桃[へんとう]や舌の付け根、口蓋垂[こうがいすい:いわゆる“のどちんこ“]のあたりにできるがんを指します。中でも、扁桃にできるものが多い傾向にあります。
日本では、毎年、2万4千人ほどが中咽頭がんと診断されます。
たばこやお酒が原因でできるものと、HPVというウイルスの感染が原因とされるものがあります。
HPV陰性(たばこやお酒が原因)の中咽頭がんは、中高年の男性に多く見られます。これは、性差によるものではなく、生活習慣の違いの影響が大きいと考えられています。
一方で、HPV陽性(ウイルス感染が原因)の中咽頭がんは、比較的若い方や女性にも増えています。

頭頸部の解剖図
頭頸部のつくり

初期症状

初期の自覚症状は、ほとんどありません。
がんが大きくなってくると、「首のしこり」や「片側の扁桃腺の腫れ」を感じる患者さんが多いです。飲み込むときの違和感や、長く続くのどの痛み、耳の痛み、声の変化などで気づく方もいらっしゃいます。
胃カメラ検査や歯科健診で見つかる場合もあります。
しかし「のどに違和感がある方」は多いものの、実際には「がんが違和感の原因である」ことはそれほど多くありません。また、中咽頭がんをはじめとする頭頸部(とうけいぶ:頭から首、のどにかけての部位)がんの専門医は全国でも500名ほどしかおらず、中咽頭がんは早期発見・早期治療が難しいがんのひとつです。

中咽頭がんの自覚症状

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治療法

手術と化学放射線療法が主な治療法です。 中咽頭は「話す」「飲みこむ」ために重要な役割を果たしています。そのため、がんを取り去ることと同時に、機能を残すことも重要視されています。どの治療法にもメリット・デメリットがありますので、患者さんの状態にあわせて、ていねいに検討します。 また、中咽頭がんは、「食道がんや胃がん、肺がんと重複して発生することが多い」ことがわかっています。そのため、他の部位にもがんが無いかしっかりと検査をしたうえで、治療計画を立てます。

化学放射線療法

抗がん剤治療と放射線治療を組み合わせた治療法で、手術を行わずに治癒を目指す方法です。抗がん剤と放射線治療を併用することで、治療効果を高めることができます。
皮膚炎などの一過性の副作用以外では、外見への影響はほとんどありません。しかし、手術に比べて、治療拘束時間(治療にかかる時間とその後の回復時間を合わせた時間)が長い傾向があります。
長期的な副作用には、「だ液が出にくくなる」「味覚障害(塩辛さを強く感じる、甘みを感じにくくなる)」などがあります。

手術

がんが小さく、表面にとどまっている場合には、口から器具を入れてがんを切除する手術をします。(経口的切除術)
がんが進行していると、首の外側からがんを切除する手術になります(外切開手術)。大きな手術になりますので、必要に応じて、太ももやおなかから筋肉と皮膚を移植して外見や機能の改善をはかります(皮弁形成術)。
中咽頭がんは首のリンパ節(頸部リンパ節)に転移することが多いがんです。リンパ節に転移している場合や、転移の可能性がある場合などには頸部リンパ節も切除します(頸部郭清術)。頸部郭清術は、外切開手術と同時に行うこともあれば、経口的切除術と併用することもあります。
切除する範囲が広い場合には、「声を出す」「飲みこむ」などの機能が損なわれることがあります。また、頸部郭清術により「顔がむくむ」「肩が動かしにくくなる」などの後遺症が現れる場合があります。もし、後遺症が発生した場合には、影響を最小限に抑えるために、手術後は早い段階からリハビリテーションを行います。

頸部郭清術の術中写真
頸部郭清術

上尾中央総合病院の中咽頭がん治療

当院では、「がんの制御」「機能温存」「見た目(整容面)の満足」に重点をおいて診療にあたっています。
中咽頭がんは、食道がんや胃がん、肺がんと重複するものが多いことがわかっているので、治療開始前にすべてのがんを見つけ、同時に治療する計画を立てる必要があります。
当院は、消化器内科と耳鼻いんこう科が互いの診療内容を補完しあって医療が提供できるしくみを整えています。
たとえば、当院の胃カメラ検査を担当する医師は、のどにも病変がないかを診ています。そこでがんが見つかった場合、消化器内科と耳鼻いんこう科で相談しあって、症例ごとにより確実な方法で切除しています。 治療法は、標準治療に基づいて、がんの進行の程度や体の状態、年齢、患者さんの希望なども含めて検討します。多くの科がある総合病院の強みを生かして、心臓や腎臓の機能が低下している患者さんの手術もお受けしています。
治療後も、患者さんの生活は続きます。話す、食べる、飲むという日常生活を、いままでに近い状態で送っていただけるように努力しています。

2022年12月からは、ロボット支援手術ダビンチによる中咽頭がんの手術もおこなっています。(適応には条件があります) ロボット支援手術では、口にロボットアームを入れてがんを切除します。いままでの経口的切除術よりも、込み入った動作がスムーズにできることが最大の利点です(経口的ロボット支援手術:Transoral Robotic Surgery ; TORS)。
狭い口腔内が拡大され立体的に見えること、360度自由に動くロボットアームが微細な動作を行えることから、より確実にがんとその周辺のみを切除でき、今まで以上にのどの機能を温存できる可能性が高まります。 また、放射線治療には、体の同じ部位にあてる放射線量に限りがあります。ロボット手術には、万が一、のどの他の部位にがんができた場合に備えて、放射線治療を温存するメリットもあります。

ロボット手術の写真(術者と麻酔科医・器械出し看護師)
ロボット手術の写真
ロボット手術の写真(術者と助手)
ロボット手術の写真

この記事を書いたのは

大﨑 政海のプロフィール画像
大﨑 政海(おおさき まさみ)科長
耳鼻いんこう科・頭頸部外科
詳しいプロフィールはこちら
畑中 章生 のプロフィール画像
畑中 章生 (はたなか あきお)科長
耳鼻いんこう科・頭頸部外科
詳しいプロフィールはこちら

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