対象となる疾患
- 心臓弁膜症の患者さんのうち、「重度症候性大動脈弁狭窄症の高齢者」が対象です。
くわしくは、ページ下部の「対象となる患者さん」をご覧ください。
手術の概要
TAVI(タビ)とは、Transcatheter Aortic Valve Implantationの略語で、「経カテーテル大動脈弁植え込み術」といいます。TAVR(Transcatheter Aortic Valve Replacement)と呼ぶこともあります。
TAVIは、重症の大動脈弁狭窄症に対する治療法で、開胸することなく、また心臓を止めることなく、カテーテルを使って人工弁を患者さんの心臓に留置します。低侵襲(治療のために患者さんの体を傷つける度合いが少ないこと)に加えて、全身麻酔や人工心肺を使用しなくて済むことから、患者さんの体への負担が少なく入院期間も短いのが特徴です。その結果、『高齢のため体力が低下している』『他の持病を持っているために、開胸手術が難しい』という患者さんにも治療をおこなうことが可能になりました。また、TAVIは術後1週間程度で退院が可能となります。
TAVIの手術
TAVIはカテーテルによるアプローチ方法がいくつかあります。太ももの付け根の太い血管からカテーテルを挿入する「経大腿アプローチ」は、TAVIの基本アプローチで、もっとも体に負担が少ない方法です。足の血管が細いなどの理由で経大腿アプローチが難しい場合は、左胸部を小さく切開する「経心尖部アプローチ」、右胸骨上部を小さく切開する「上行大動脈アプローチ」や「経鎖骨下動脈アプローチ」などもあります。
上尾中央総合病院でのTAVIへの取り組み
ハートチーム
当院は国内外からの多くの知見と経験を合わせもつ循環器内科医、心臓血管外科医、麻酔科医の精鋭エキスパート、コメディカルなど多方面にわたる専門家たちが集まり、個々の患者への治療にチームとして取り組んでいます。このチームによる精密な術前評価から実際の治療、術後管理までは、全てが一貫しており、安心感にくわえバランスのとれた最適な医療のご提供に確実につながってまいります。
超低侵襲TAVI
当院は、「超低侵襲TAVI」を取り入れております。具体的には、全身麻酔や人工呼吸器を必要としない局所麻酔下のTAVIを積極的に行なっており、手術後の回復が早くなります。また、通常はTAVIの手技中に造影剤(血管の様子を分かりやすくする効果があるが、腎臓に負担がかかる薬剤)を使用しますが、腎臓機能が悪くて血液透析のリスクが高い患者さんには、造影剤を使用せずにTAVIを行っています。
TAVI専門外来
大動脈弁狭窄症の患者さんが、安心して最適な治療を受けられるための外来です。専門的な知識を持った医師が診療を行なっております。また、TAVI後も定期的にTAVI外来で、内科的管理を行なっております。
対象となる患者さん
対象疾患は、大動脈弁狭窄症です。そのうち、重度の大動脈弁狭窄症が原因で、めまい、息切れ、胸痛などの症状がある患者さんが対象となります。今までは高齢や持病などの理由で開胸手術では体への負担が大きいと判断されたリスクが高い患者さんに限定されておりました。しかし、最近では医療機器の改良や手技の成熟、TAVIが開胸手術と比べて、治療成績が同じくらいか、もしくはそれ以上に安全になってきたために手術のリスクが低い患者さんも対象になってきております。
さらには、過去に大動脈弁の病気で生体弁手術がなされ、現在、人工弁機能不全に陥った患者さんも対象になります。日本循環器学会のガイドラインでは、優先的に考慮するおおまかな目安として、80歳以上をTAVI、75歳未満が開胸手術となっております。(75~79歳は患者さんの状況により要検討)また、患者さんのご希望も十分に考慮することが記載されています。
当院ではTAVI治療の適応について、総合的にハートチームで入念に話し合いを行った上で一番良い治療法をご提案させて頂きます。下記がTAVIの適応例です。
- 80歳以上の方
- 過去に開胸術や胸部への放射線治療などの既往のある方
- 人工生体弁が機能不全に陥った方
- 心不全の状態が悪い方
- 肺気腫などの慢性呼吸器疾患がある方
- 脳梗塞や頸動脈狭窄の既往のある方
など
使用する弁
カテーテル生体弁
治療実績
31症例(2022年実績)、30症例(2021年実績)、37症例(2020年実績)