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中咽頭がんのロボット手術を実施

2023.02.27
プレスリリース

医療法人社団愛友会 上尾中央総合病院(院長:徳永英吉)は、「がんを確実に切除すること」「極力機能を温存すること」両立の可能性をより一層高めるため、中咽頭がんに対する手術支援ロボットを用いた経口的切除術(Transoral Robotic Surgery ; TORS)を2022年12月から開始しました。術後の経過も良好ですので、ここにお知らせいたします。

ダビンチXi
ダビンチXi

中咽頭がんとは

中咽頭がんは、扁桃や舌の付け根、口蓋垂(いわゆる“のどちんこ“)のあたりにできるがんを指します。中でも扁桃にできるものが多い傾向にあり、日本では、毎年2万4千人ほどが中咽頭がんと診断されます。
原因は「過度の喫煙や飲酒」「HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染」に大別されます。HPV関連がんの多くがp16タンパクを過剰に産生する(陽性となる)ため、治療にあたっては、p16陽性かp16陰性かを調べます。p16陰性(喫煙や飲酒が原因)の中咽頭がんは、中高年の男性に多く見られます。一方で、p16陽性(ウイルス感染が原因)の中咽頭がんは、比較的若い方や女性にも増えています。
自覚症状は、初期にはほとんどありません。がんが大きくなってくると、「首のしこり」や「扁桃腺の腫れ」という自覚症状があらわれます。扁桃腺の腫れは、片側のみである方が多いです。飲み込むときの違和感や、長く続くのどの痛み、耳の痛み、声の変化などで気づく方がいらっしゃいます。歯科健診や胃カメラ検査で発見されることもあります。
しかし「のどに違和感がある方」は多いものの、実際には「がんが違和感の原因である」ことはそれほど多くありません。また、中咽頭がんをはじめとする頭頸部(頭から首、のどにかけての部位)がんの専門医は全国でも500名ほどしかおらず、中咽頭がんは早期発見・早期治療が難しいがんのひとつです。

中咽頭がんの治療法

おもな治療法は手術と化学放射線療法※1です。
中咽頭は「話す」「飲みこむ」ために重要な役割を果たしています。そのため、がんを取り去ることと同時に、機能を残すことも重要視されています。どの治療法にもメリット・デメリットがあるので、患者さんの状態にあわせ、丁寧に検討します。
また、中咽頭がんは、「食道がんや胃がん、肺がんと重複して発生することが多い」ことがわかっています。そのため、治療計画を立てるにあたっては、他の部位にもがんが無いかしっかりと検査をします。

中咽頭がんの手術

がんが小さく、表層にとどまっている場合には、口から器具を入れてがんを切除する手術をします(経口的切除術)。
がんが進行していると、首の外側からがんを切除する手術になります(外切開手術)。切除する範囲が広くなりますので、必要に応じて、太ももやおなかから筋肉と皮膚を移植して外見や機能の改善をはかります(皮弁形成術)。
中咽頭がんは頸部リンパ節(首のリンパ節)に転移することが多いがんです。リンパ節に転移している場合や、転移の可能性がある場合などには頸部リンパ節も切除します(頸部郭清術)。

中咽頭がんのロボット手術 【TORS】

切除範囲が広い場合には、「声を出す」「飲みこむ」などの機能が損なわれることがあります。
上尾中央総合病院(以下、当院)では、「がんの制御」「機能温存」「整容面(見た目)の満足」に重点をおいて診療にあたっています。
患者さんの暮らしは治療後も続きます。「がんを確実に切除すること」「極力機能を温存すること」を両立させ、会話や食事を楽しむ日常を1人でも多くの患者さんに送っていただきたい。その思いから耳鼻いんこう科・頭頸部外科で、内視鏡手術支援ロボットダビンチによる経口的ロボット支援手術(Transoral Robotic Surgery ; TORS)を開始しました。 ロボット支援手術では、口にロボットアームを入れてがんを切除します。いままでの経口的切除術よりも、込み入った動作がスムーズにできることが最大の利点です。
狭い口腔内が拡大され立体的に見えること、360度自由に動くロボットアームが微細な動作を行えることから、がんの周囲に適切な安全域をつけて切除でき、今まで以上にのどの機能を温存できる可能性が高まります。 中咽頭がん以外には、下咽頭がん、喉頭がんもTORSの適応となります。しかし、「リンパ節節外浸潤がない※2」「放射線治療を受けていない」ものに限られ、すべての患者さんに提供できるものではありません。
TORSを一人でも多くの患者さんの選択肢にできるよう、早期発見・早期治療にむけて他の診療科や近隣医療機関との連携をより一層深めてまいります。

頭頸部と中咽頭
頭頸部と中咽頭
TORS術中写真
TORS術中写真

執刀医(奥)と助手(手前)
執刀医(奥)と助手(手前)
助手は患者側の安全管理も担う
助手は患者側の安全管理も担う

※1. 化学放射線療法:化学療法(抗がん剤による治療)と放射線治療を組み合わせた治療法。
※2. リンパ節節外浸潤:リンパ節に転移しているがん細胞が、リンパ節被膜を越えて広がっている、または、リンパ節周囲の軟部組織(筋肉や血管、脂肪組織など)に浸潤している状態。

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